『月面探査記』感想※ネタバレなし

映画ドラえもんのび太の月面探査記、公開されましたね!

f:id:A_mrvl_rus:20190302213216j:image

公開2日目ですが、既に2回見ました。1回目はドラえもんのビジュアルの可愛さに気を取られて正直ほとんど内容が頭に入ってこないので、2回見てやっと感情が追いついてきた感じがします。

とりあえず、シリーズ39作目となる今回のドラえもん映画『月面探査記』について、ネタバレなしの感想を書かせていただきます。

まだ感情がやっと追いついたくらいの人が書いてるので、信憑性は多分低いです。

 

f:id:A_mrvl_rus:20190302213326j:image

【子ども視点から見ると】

かなり難しい内容だったのではないでしょうか。中盤以降いきなり大人向けな内容になってましたね。5歳児が立派なターゲット層であると考えると不適切なレベルでした。内容の難しさをバトルシーンの単純さで多少隠したのかな。小説版も読みましたが、心情描写かなり削ってましたね。冷静に考えて5歳児に辻村深月の心情描写は厳しいところがあるかな⋅⋅⋅。あと普段より多少長かった?のかな?

f:id:A_mrvl_rus:20190302213332j:image

【一般的な視点から見ると】

ルカくんイケメンすぎて泣いちゃった。しずかちゃん女神か? 

かぐや姫がモチーフになった世界や、キーワードの「想像力」を存分に活かしたストーリー構成、そしていつもどおりのバケモン作画は完璧でした。考察しがいがある綺麗なお話だったと思います。感動できるシーンもありました。

でもこれ、多分去年の『のび太の宝島』のほうが一般受けするのでは。あれめっちゃお涙頂戴だったもんね。

前半とバトル後の心情描写が素晴らしく、泣いている大人も劇場にたくさんいましたが、バトルシーンにドラえもん特有のダサさと突発さがあったのと、登場人物があまりにも純粋で単純明快な心を持っているのは、心が汚れた大人にはシュールに映ると思います。

f:id:A_mrvl_rus:20190302213515j:image

ドラえもんオタクから見ると】

辻村深月さんのF先生愛に脱帽しました。最高です。

私は1998年生まれなので、F先生の作品が夜に出る瞬間を見たことがありません。その興奮を他のFファンと味わったことがないんです。毎年出る映画については、リメイク作品はワクワク感に欠けるし、オリジナル作品は良くも悪くも「他の人が描いたなあ」という感じでした。

正直、今回の作品は『凍りのくじら』などで既にドラえもん、というかF先生の大ファンと公言している辻村深月先生が描くということで、発表当初から期待していました。

いざ観てみるとやはりF先生とはちょっとちがう、先生に比べると寂寥感と雑さが足りないなぁ、とは思ったけれど、今の時代の今の子どもたちに合った、素敵な作品でした。

F先生再現度は過去最高なんじゃないでしょうか。ありがとう!この時代に生きててよかったぜ!リアルタイム史上最高の気持ちです!さあファンのみんな!おれといっしょに祭りさわぎしよう!

f:id:A_mrvl_rus:20190302213637j:image

ここで、『F先生らしさ』を考えるために、過去39作のドラえもん映画の超雑な考察をお送りします。実はFamilyMartでトラブルがあって店頭で2時間立って待たされたのですが、その間に書いたメモなので、なんかおかしかったらすいません。

 

・作品のテーマについて

2006年の新声優による「恐竜」以降、作品テーマに「友情」が強調されるようになりました。のび太たちが住む世界と、何らかの「別世界」を往復して話が進行するスタイルは変わらず、別世界で出会った友達と出会い、別れる構図もそのままですが、より別れの部分が強調されるようになったと思います。リメイク作品の鉄人兵団でピッポが追加されたことはその象徴かと。そもそもメインの5人は原作だともっとサバサバした性格です。

 

・39作を通して、のび太は一貫して優しく諦めない人物として描かれており、毎回最後には別れを乗り越える描写もありますが、性格的には全く成長せず、むしろのび太を通じたゲストキャラの成長が強く描かれています。


・映画において、しずかちゃんは非の打ち所がない人物であることが多いです。ドラえもんよりもひみつ道具に熟知しており、ピンチの時はほぼ必ず覚醒します。


・逆に、しずかちゃん以外のキャラは、しずかちゃんやゲストキャラを危険から遠ざける傾向にあります。結果、しずかちゃんはゲストキャラの看病を請け負うことが多くなり、物語の重要なシーンに居合わせる可能性が高いです、

 

・映画におけるしずかちゃんは「優しさ」がかなり強調されています。しずかちゃんの優しさで事件が解決することも割と多いです。


・逆にスネ夫は情けなさが強調されていますが、そのためか、ゲストキャラ同様、1作の中でかなりの成長を見せるキャラクターとして描かれています。

 

ジャイアンの性格が変わる、という定説がありますが、ジャイアンは長編以外とほとんど性格が変化していないと思います。やると決めたことをやる、絶対に曲げない、気に入らないやつはふっ飛ばすという性格が、長編のストーリーではかっこよく見えるのだと思います。


ドラえもんはいつもと変わらずポンコツです。長編では、ゲストキャラの心を動かす役割が与えられているのはのび太またはしずかです。ドラえもんの立ち位置は、「窘め役」「道具を出す役」「囚われ役」「単にのび太の友人」のいずれかです。サブタイトルに必ず「のび太」が入っていることからも、長編ではのび太が主人公となっていることがわかります。

 

・大長編には、必ず「新しい仲間」「(最初期を除き)マスコットキャラクター」が登場します。また、舞台は東京都練馬区以外で、一般的な地球人がメインキャラ以外に存在しない場所です。現在の日本が冒険の舞台となるのは、「鉄人兵団」が最初で最後です。なお、鉄人兵団も鏡の世界なので厳密には

異世界です。


・「ひみつ道具博物館」を例外として、絶対悪が存在します。なお上記の長編はF先生の原作ではありません。


・1つのひみつ道具が起点となり、話が展開していきます。「あるひみつ道具を起点として異世界へ行き」「ジャイアンスネ夫、しずかを誘い」「ゲストキャラと親交を深め」(なお

ゲストキャラと親交を深めるシーンは、具体的なエピソードだけでなく、ある異世界の紹介的なダイジェストシーンも合わせて描かれます)「絶対悪が登場し」「絶対悪を倒して」「ゲストキャラと別れる」のが基本的な構成となっています。


長編映画中で最も多く使用されているのは武田鉄矢の楽曲です。(これはあまり関係ない)

 

のび太くんは、映画中盤で一時的に離脱し、単独行動をすることが多いです。

 

・前述したとおり、長編におけるのび太としずかは絶対的な存在であり、ゲストキャラ、(ジャイアン)、スネ夫が主に成長します。


・ゲストキャラは壊滅的な危機に晒されており、彼らと親交を深めながら危機を解決するのが定石です。


ドラえもんは教育的かつ説明的なセリフが普段と比べるとかなり多くなります。

 

・F先生の原作通りでは子ども向きの作品とは言い難いものもあり、映画では友情が強調されることにより対象年齢を下げているように感じます。


ドラえもんが歴史的・科学的な根拠がある事実を語るシーンは、映画化する際に原作から削られていることも多いです。


・F先生以外が原作の場合、ドラえもんの説明的なセリフは激減します。

 

f:id:A_mrvl_rus:20190302214200j:image

改めて、今回の映画についてです。


・脚本の辻村さんがF先生のファンだということは有名ですが、さすが!オリジナル作品ではかつてないレベルの再現度でした。


のび太、しずかは絶対的な存在で、ドラえもんはある意味添え物、ジャイアンはいつも通り傲慢だけどなんとなくかっこよくて、スネ夫は惚れっぽくて情けない。正直例の『奇跡の島』や『ひみつ道具博物館』では、スタッフと自分の中のキャラクターたちの面影に壊滅的な解釈違いを覚えつつ、これも新しい時代だから我慢しないといけないのか⋅⋅⋅と涙をのんでいましたが、やっぱり間違えてなかったんですね!F先生が同じストーリーラインを与えられてセリフだけ書けって言われたら、多分ほとんど同じセリフを書いていたと思います。特にしずかちゃん関連。F先生は女の子を丁寧に書くし、物語の登場人物には特別扱いさせるのに、物語には特別扱いしないんです(伝われ)。しずかちゃん、かっこよかった!

 

ドラえもんの説明的セリフの多さ、子どもが見ることを意識した道徳的内容の方向性や歴史的事実への言及がF先生を意識したつくりになっていた。F先生は子どもを大切に思っていて、だからこそ現在の実在する科学や歴史をベースに用いることが多かったんです。それがすごく自然にできていて感動しました。


ドラえもん作中でファンならどこかで聞いたことがあるセリフが多い。しびれる!


・F先生以外の原作で忘れられがちだった「起点となるひみつ道具」が『異説クラブメンバーズバッジ』というもので固定されている。


そして、今回おそらく見比べたファンが多いであろう作品が「のび太の鉄人兵団」です。正直「鉄人兵団」と比べると様々な面で劣る作品ではありましたが、作品のストーリーラインの構成、メインキャラクターの立ち位置、作品テーマが「鉄人兵団」をかなり意識していたように感じます。ゲストキャラクターの立ち位置は宇宙開拓とか魔法使いあたりだと思う。

 

・自分たちの世界と、異世界を行き来しながら冒険するドラえもん大長編の醍醐味、完全に再現されていました。

救われるんだけど、うまくいかないこともちょっとはある。そんな微妙な気持ち、F先生の既存作品とドラクエ以外ではじめてみました。

 

・寂寥感がありながらも、優しい別れが素敵でした。正直、この別れのシーンには、感動とともにある違和感がありました。これに関してはネタバレを含んでしまうので、別の機会に考察できればな、と思います。

f:id:A_mrvl_rus:20190302215520j:image

 

ここまで超褒め称えましたが、やっぱり後半は雑な部分が目立ってたかなと思います。バトルシーン酷くない?

ただ、それは小説版では全く違和感がなかったので、映画ドラえもんが完全な大人向けになることを恐れた監督がなんとかした結果じゃないかなと。F先生時代にもよくあった配慮です。ちなみに今回の八鍬監督、最近のドラえもん映画監督の中で1番信頼しています。今回も素敵な冒険をありがとうございました。

 

(一応補足しておきます。これまでのオリジナル作品を批判する気持ちは全くありません。むしろ、子どものことを考えて丁寧に作られた素敵な作品だったと思います。特に去年は興行収入が飛び抜けて高くなったことも納得の出来でした。)

 

小説版だと、ルカの最後の願いに至るまでの心情描写がもっと細かったので、補足が欲しい方は読んでみてください。

 

そして、この物語は、辻村深月先生からF先生へのメッセージでもあるんじゃないでしょうか。この辺もネタバレになるので、他の記事でまた考察します。

 

それにしても、ここまでF先生に寄せた作品作りをしてくれて、よかったんでしょうか。辻村深月先生の作品は好きで以前から読んでいますが、やはり作風が違いました。もっと彼女らしさ全開のドラえもんも機会があったら見てみたいです。この前の川村元気さんみたいな。

 

改めて、F先生ファンにとっては、待望の新作とも言えそうな『月面探査記」でした。

全然関係ない(ないのか?)ですが、今回舞台が秋でしたね!ドラえもんの大長編といえば初夏から夏休みという季節設定がずば抜けて多いと思うのですが、どうでしょうか?

単純に十五夜のシーン出したかっただけかな?それとも⋅⋅⋅(このへんもネタバレに以下略)

秋という季節が採用されたことに関して、めちゃくちゃ雑な感想を言っとくと、作画班お疲れ様!です。とても綺麗で楽しめました。個人的に秋はとても好きな季節なので、リニューアルドラのおもくそ美しい画面で見ることができて感無量です。 

 

ネタバレを含む考察も今すぐしたいのですが、最初に述べたとおり、まだ2回しか見ていなくて感情がやっと追いついてきたレベルのことしか言えないので、もう少し見てからにしようかな。

しばらく映画館に通います。 

次は、今日(公開2日目)にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた舞台挨拶について書こうかと思います。気が向いたら読んでください。